司法試験を受けた頃はタックスローヤーを目指していました。大学では地方税制や税法策などを学び、「税務に関する弁護士の仕事は面白そう」と興味がわいたからです。また、弁護士になるなら「ちょっと変わった分野」に取り組んでみたいという思いもありました。
司法試験合格後、鳥飼総合法律事務所の門を叩きました。鳥飼弁護士は税務訴訟で知られ、新たな領域を切り拓いていく、私にとって憧れの存在でした。ところが入所させていただいたものの、2年勤務後に独立。私個人のクライアントの案件が増え、事務所案件と並行することが難しくなり、“やむを得ずの選択”です。当時の同事務所は個人事件の獲得が自由で、私自身「自分のクライアントを持ってこそ一人前」という考え方だったので、積極的に様々な集まりに顔を出しては交友範囲を広げ、徐々にご依頼をいただくようになっていたのです。
クライアントの多くは、スタートアップ企業。時期的には、いわゆるネイティブアプリが安価で開発できる市場と環境が整備され、そうしたビジネスを行う企業が少額出資を受けながら事業をどんどん拡大していく時代の入り口でした。タックスローヤーになる目標はどこへ?という自己矛盾も多少は感じました(笑)。しかしスタートアップ企業の支援は、「お客さまの夢実現に伴走できること」「新しいビジネスの成長をサポートできること」が、文句なしに楽しかったですね。
弁護士3年目といえば、いわゆるジュニアクラス。それでも“勝負(独立)”できたのは、スタートアップ企業の法的支援が、弁護士にとって“新たな領域”だったからだと思います。訴訟のようにノウハウが蓄積されている領域では、3年目の弁護士は品質面で勝てません。しかし、若くて新たな知識の吸収力があったこと、ITをはじめとする顧客のビジネス領域について学ぶこと、知ることが楽しくて、どんどんのめり込んでいきました。
ビジネス上のリスクなどを利用規約や契約書に落とし込むためには、そのマーケット自体や製品の仕組みを理解していることが必要です。また、日本のベンチャーファイナンスもまだまだ発展途上でしたから、関連する書籍やメルマガ、ありとあらゆる情報を収集して知識を蓄えました。そのように誰もやっていない領域で、なおかつ品質で負けないレベルのサービスを提供するために、無我夢中で走り続けた20代だったと思います。